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酪農の未来を見据えて。酪農教育ファームの意義とは

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この記事の登場人物

生目澤 初実
木目澤牧場
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“食といのちの学び”をテーマに、教育活動を行う酪農教育ファームデイリー泉崎・木目澤牧場。

“食といのちの学び”をテーマに、教育活動を行う酪農教育ファームデイリー泉崎・木目澤牧場。

この取り組みの目的は、子どもたちが牧場で乳牛などの生き物と触れ合うことで命の大切さを知る、また酪農家の暮らしや働きを知り、現場理解を深めることです。

平成10年7月に、社団法人中央酪農会議より教育関係者と酪農関係者の協力を得て、酪農教育ファームが委員会として立ち上がりました。

今回は活動を行っている福島県の木目澤牧場でお話を伺いました。

酪農教育ファームの活動によって得られたもの 

酪農教育ファームとして、まず必要なのは、農場側の整備。教育の場としてふさわしい環境づくりや、指導者としてふさわしい教育・指導の実施が行われます。

たとえば、子どもたちを受け入れるにあたって、保険への加入や手洗い場やトイレの整備などが必要。そして、このような準備ができて初めて、認証牧場に認定されます。

「私たちは平成13年に始めました。始めた当時は自分の子どもたちも小さかったので、“幼少期から動物と触れ合えるっていいな”って思っていたんですよ。」

現在、木目澤牧場では、お住まいの地域、泉崎村の酪農家4組とデイリー泉崎という団体を組んで活動を行っています。

「当初は50人くらいの体験学習が盛んで、夫婦二人じゃ手に負えなかったので仲間に一緒に手伝ってもらっていました。だからみんなで助け合ってやっていたって感じですね。」

「酪農教育ファームの活動によって、地域の仲間との連携が深まった」と、木目澤さんは言います。

それだけではなく、全国の酪農家ともつながりが生まれていったそうです。

子どもたちの搾乳体験を通して、改めてわかった酪農のこと 

この活動を経験してわかったことも多かったとのこと。その中でも印象的なのが搾乳体験だと木目澤さんは言います。

「子どもたちが体験を終えての感想が面白かったんです。牛乳を搾って、『あったかい』と大きな声で感動しながら言ったことがあったんですよ。ふだん飲んでいる牛乳が冷たいから、知らないんですよね。私たちからすれば当たり前と思っていたけど、酪農家じゃないと知らないものなんだなと、勉強になりましたね。」

「その搾った牛乳を飲みたいと言われるけど、食品衛生法上そのまま飲むことはできないので、いつも困りますね(笑)」

ふだん飲んでいる牛乳が手元に届くまでにどういう手順や経路があるのか、知らない方は多いことでしょう。

酪農教育ファームの実施は、子どもたちにとっても酪農家にとっても新鮮な体験となっているようです。

変化している受け入れの現状 

当初は、子どもたちを対象にはじまった酪農教育ファームでしたが、近年では受け入れ方に変化が。

「これまでは小学生が多かったのですが、近年は、農大生向けの実践的な体験が多くなっています。」

小学生ではなく大学生の受け入れが中心となったことで、木目澤さんの目線も変わったとのこと。

大学生は、農業関係会社への就職活動の一環として、また大学院生の研究として参加される方が多い様子。 直接現場に関わる人だけではなく、間接的に携わる人も知見を広げるために訪れます。

「大学生の場合には、少人数制にしてより実践的なことを伝えるようにしています。」

酪農教育ファームを通して伝えたい、酪農の未来にかける想いとは 

小学生の体験とは異なり、大学生には将来に活かせる意義のある体験をしてほしいからこそ、厳しく指導することもあるそう。

「大学生は、授業の一環として参加する子と目的を持って参加する子で明らかな差がありますね。取り組み方の違いでわかるから、ウチとしてはストレートに駄目なところを言っちゃうんですよ。だからめげる子もいるかもしれません。」 

「漫画の影響で酪農をしてみたいっていう子がたまにいるので、そこは今の時代らしいかなと思いますね。ただそのイメージできて牛と遊んじゃう子もいるので、その時は“何しに来たのかな”って思いますよね。それでも私たちとしては、やっぱり来てくれたからには少しでもいい経験をして学んでもらいたいので、時に厳しく、真摯に向き合うようにしています。」

その言葉からは、酪農家が減っているといわれる日本の状況を、ただ人を増やすだけではなく、酪農に対して強い想いを持っている人が必要だ、という願いが感じられました。 

いかがでしたか。

こういった酪農教育ファームでの体験が、酪農の未来を変えていくのかもしれません。現在、こういった酪農体験は全国の牧場で行われています。興味のある方は、一度調べてみてはいかがでしょうか。

木目澤牧場

  • 営業時間:
  • TEL:0248-53-3607
  • 定休日:
  • アクセス:JR泉崎駅から車で約10分  東北道矢吹ICから約10分

木目澤 次男さん・久實子さん   きめざわ つぎおさん・くみこさん

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